上坂部にある大原家具店の大原夫妻にお話を伺いました。
中学校を卒業した後家具職人の世界へ入り、その後家具の販売を４３年。
家具に携わって６０年！御年７５歳！！！
子供を３人育てあげ、家具一筋に生きてこられたご夫婦です。
その大原家具店も今年の１０月末でお店を閉めるそうです。
長年付き合いのあるお客さんが、とっても残念がっています。
大原家具店のお父さんは、５歳の頃、尼崎の空襲も経験し、Ｂ２９が焼夷弾を雨のように落としていく中を、命からがら草履で逃げ、間一髪、神社の防空壕に逃れることができたそうです。
更にこのお父さん、昭和３２年に運転免許とって家具を運んだり毎日運転していて、無事故無違反。
毎日トラックを運転していて金正賞なんて凄すぎます！
商売も運転も丁寧にされてこられたご夫妻です。

―家具に携わるようになったきっかけは？

兄弟が８人いて、当時はものの無い時代。就職も難しい時代やった。
高校に行かずに、手に職をつけなあかんということで、中学卒業してから家具職人になるために家具職人のところへ修業にいった。
当時は親方や兄貴職人は言葉ではなーんにも教えてくれない。
親方や兄貴職人の仕事を目で見て覚えていった。
そうして、自分で家具を作れるようになって、自分で家具を作って、尼崎から大阪の京橋の方へ自転車のリアカーに積んで売りに売ってたんや。
昔は車が無いから、なんでもリアカーに積んだんや。
尼崎の金楽寺で家具工場をしてたんやけど、周囲に住宅が建ちだして、埃や騒音でできなくなっていった。その後に、上坂部で家具の販売をすることになった。
そんときは３人目の子供がお腹にいた頃やった。

―ご自身で商売始めてからはどうでしたか？

最初はお客さんが来んやろうということで、臨時工やりながら家具の販売をしていた。
臨時工っていうのは、今でいうパートさんやな。
その後、地元のお年寄りの方が、坂部で商売するんやったら坂部の人が盛り立てなあかんなと言うてくれて、盛り立ててくれ、沢山買ってくれるようになった。
嫁入り道具をおばあちゃんと孫が一緒に買いにきてくれたりな。
そして、当時は集団就職の時代。
上坂部には森永工場があり、沢山の集団就職の社員さんがきて、社宅があったから、森永の新入社員さんが沢山買っていってくれた。
新入社員さんが買ってくれた家具を組み立ててあげた。
森永の社員さんの結婚の引き合わせもしたことあるわ。
お見合いして結婚した方の家具も買ってもらった（笑）。
森永の寮を出た子が新しいところで住むときもトラックで送ってあげたり、夜中に寮の子が急に故郷に帰らないといけないときもトラック出してた。
人と人とのつながりでやる商売やな。

－ご商売していて大変なことはありましたか？

商売してたら色々あるわ。
水害にも遭い家具が水に浸かってしまってダメになったこともあった。
阪神大震災でも被害にあったわ。

うちは職人やから、安い商品を安いままでお客さんに引き渡したりはようせんねん。
安い商品に手を加えて、良い家具にしてから引き渡す。
自分ができることをしっかりやってから出す。
だから、大原さんの家具はビクともせんってお客さんが言うてきてくれる。
阪神大震災の後、よく売れた。
お宅の家具は何ともなかった。と言われた。
だから４３年やってこれたんや。

一番のエピソードは、１０月いっぱいで店閉めるのに、７月に店のクーラーが潰れたことが一番のハプニングやな（笑）
あとちょっと辛抱やな（笑）

家具に携わり、６０年。家具の販売を始めて、４３年。
大原夫妻のお話を聞くと、やっぱり人と人との繋がり、そしていい仕事をするんやという、職人魂が長年商売を続けることができた秘訣なんだと思います。

こちらの家具は知り合いの家具職人から現金仕入れしているため、安く仕入れて安く売っておられます。
本当に良い家具を、家具職人のご主人が仕入れた家具に更に材を入れたりと手を加えて補強したりしているので、丈夫な家具です。
４３年やってきて、「いい商売やったわ」と笑顔で話すお母さん。
「楽しくやってこれた」という笑顔の裏にはしんどい時も夫婦一緒に乗り越えてきたという自負も感じました。
本当に素敵なご夫婦でした。
今年の１０月末までされているので、是非お店を覗いてみて下さい。
気さくであったかいご夫婦が迎えて下さいますよ。